工場は平均年齢が30代前半という若いスタッフのエネルギーに支えられている感があった。
丸洗いクリーニングや解体リニューアルのセクションなどは真夏には40℃を超えるたいへんな暑さとなる。
また充填の現場は充填機の騒音が、想像以上に大きい。
決して、快適な仕事場とはいえないが、すべてのスタッフがわき目もふらずに、一心に仕事をこなしていた。
男女の区別なく、力のいる仕事も、縫製仕事も、すべてイコールに進められていることにも驚いた。
最新鋭のマシンの導入や、コンピューターに入力することでオペレーションされている部分は確かにあるが、それよりも基本的に人の目、人の手、人の力、それらが結果的にはすべてを統率していることは、言うまでもない。どんなに、機械やコンピューターが発達しても、羽毛の臭いの成分は分析できても、臭いのあるなしの即時的な判断はマシンにはできない。
また、どんなに充填機が発達しても、側生地のマスに開いた充填口を、ノズルが自動的に探しあてるとも思えない。
洗い上がったおふとんを、抱えて乾燥機に投入するのも、マンパワーである。
羽毛の現場は羽毛を知りぬいた働く人の現場であり、機械や設備の現場ではない。

この日、就業後に集まってくださったかたは、7名。
生産部、製造部、物流部のみなさんと、工場長の谷貝氏。
羽毛ふとんの現場の繁忙期は9月から2月の半年。
この間、1日に4000~5000枚のふとんを製造する。
半端な数ではない。
羽毛ふとんは、日本全国の各寝具ブランドの発注による受注生産が基本だ。
そのため、それぞれの仕様が微妙に異なる。
その違いを現場に伝え、なおかつ、効率と生産性の維持に努めないといけない。
決して流れ作業で最初から最後までを、マニュアルに従って、ただ量産すればいいという仕事ではない。
想像以上に、細かい判断や対応、臨機応変な処理と確認が必要な現場といえる。
また、羽毛ふとんという直接人の身体に触れるものの生産のため、当然クレームには特に神経を使う。
また、天然素材を扱う現場だけに、そのときの気候や自然環境の影響も受けやすい。
羽毛が含む水分率の変化はもとより、突然、臭いが発生したりする可能性は高い。
起こったことの処理以前に、起こる前の防止対策を徹底している現場でもある。

2015年9月には台風18号の影響による集中豪雨により、鬼怒川流域で数カ所が破堤、工場のほぼ全域が浸水した。蔵置していた原料羽毛、お預かりしていたリニューアル羽毛ふとんなどが水に浸かった。
致命的な被害だった。
立ち直るまで2年と予想された復旧作業を、全員の一致団結で半年足らずで成し遂げた。
その間、兵庫県加東市にあるもう一つの工場ウエストフェザーへスタッフが緊急移動し、不可能と思われた受注をほとんど24時間体制でクリアした。
両工場の協力体制で危機を乗り越えたことは、その後、大きな自信となって、それぞれのスタッフの中に刻まれていることはいうまでもない。
消費者が一枚の羽毛ふとんを購入し、それを使用するときは、もちろん就寝中であり、当然意識されないで使われていることになる。
それだけに、性能の良し悪しは、意識のレベルを超えて、微妙に感覚で判断されることになる。
ワン工程、一分たりとも気を抜くことが許されない、繊細な製品のための責任は大きい。
今回、丸洗いクリーニング、解体リニューアルなどのリユース•リサイクル現場も目の当たりに見ることができた。
タフな工程である。
全国各地から送られてくる膨大な量のふとんを、一枚一枚、解体あるいは洗浄•乾燥のラインにのせていく。
すべての工程作業が無駄のない動きで、黙々と進められていた。
最後に、やはり仕事をする仲間間でのコーチング(教育)にいちばん気を使うという発言が印象に残った。
クレームやトラブル、ミスをしないという緊張の中でも、やはり働く現場での人間関係や上司やスタッフとの
やりとり、コミュニケーション、そこの部分の円滑性を抜きにしては成立しない。
工場長や取締役の人柄にふれ、笑顔のすがすがしい真剣なまなざしの若者に出会えた2日間だった。
追伸:
時間の都合等で、2つある工場のうちウエストフェザーパワーファクトリーには出向けませんでした。
次回ぜひ、訪問させていただきたいと思います。